京都市南部に位置する伏見は、灘(兵庫県)の酒と並んで全国的にも有名な酒どころである。「名水あるところ芳醇な酒が生まれる」といわれるように、この土地には豊かな伏水が流れる。
そして名酒を生んだもう一つの背景が、日本の食文化の最高傑作といわれる京料理ではなかろうか。繊細な料理の風趣を更に豊かにする使命―そんな蔵元の心意気が、コクの深い酒造りに反映されたのだと思うのだが・・・。
 数ある名蔵元の中から、敢えて三店だけを選んでみた。  



◆キンシ正宗 キンシ正宗株式会社
 何気なく立ち寄った小料理屋で「うちは永年、ここのお酒をひいきにしています」と出してくれたのがキンシ正宗。有名な京料理の板前さんや「通」が選ぶ酒である。創醸220年の歴史を持つ蔵元だが、更に21世紀にふさわしい新しい酒造りシステムを取り入れた「新常磐蔵」を平成7年に完成させた。
そこでは時間70トン以上も湧き続ける豊富な伏水「常磐井水」に、品質のいい酒造好適米を使って、蔵人たちが培って来た酒造りの真髄ともいうべき「米洗い」「麹造り」の手作業も厭わず、かたくなに純粋な本物志向に取り組んでいる。その中でも天明元年(1781)創業者の名前を冠した「松屋久兵衛」は自慢の最高級品。キリッとした口当たりと気品のあるまろやかさは、思わずうなりたくなる逸品である。
 その他、大吟醸「金鵄正宗」「純米吟醸」「黄金酒」「金箔入金閣」など。
 また、京都御所に近い堺町二条上るにある「堀野記念館」は、現在国の有形文化財にも指定され、造り酒屋の歴史を紹介する傍ら、京の町家文化にふさわしい地ビールも造っている。
京の味を楽しめる上品で香り高い麦酒の風味も、売れ行き好調である。

 キンシ正宗株式会社
 〒612-8081
 京都市伏見区新町11丁目
 電話 075-611-5201  FAX 075-611-0080
 ホームページ  http://www.kinshimasamune.com/



◆英勲 斎藤酒造株式会社
 特筆したいのは、全国の優れた地酒から選ぶ「全国新酒鑑評会」で5年連続「金賞」受賞である。銘柄は「一吟」。
社員一丸となって、伝統の歴史と技術を結晶して造り上げた逸品である。審査員の評も「香りを出すのが難しい純米酒の中で、フルーティな上に爽やかでふくらみのある味わいが、どこよりも抜きん出ていた」と。
 江戸時代の初期、もともと呉服商であった斎藤家の初代「井筒屋伊兵衛」から9代目が酒造業に転業したのが明治28年。その後、大正4年の大正天皇ご即位の大典を記念して銘酒「英勲」が生まれたが、初代の名前を冠した「井筒屋伊兵衛」は2003年第2回全国酒類コンクールで一位に輝いた。
 酒造りに欠かせないのは水と米といわれるが、米は幻の酒造好適米といわれる「祝」。京都だけの生産で心白が大きく、吟醸造りに最適の米から造り出した銘柄「古都千年シリーズ」は、優雅で上品な酒として好評である。古都千年・・・吹く風に歴史を偲びながら、まろやかな味わいと香りが口に広がる時、忘れていた日本の故郷に帰る思いである。

 斎藤酒造株式会社
 京都市伏見区横大路三栖山城屋敷町
 電話 075-611-2124
 ホームページ http://www.eikun.com/
 



◆都鶴 都鶴酒造株式会社

 都の空に鶴が舞う・・・気品ある銘柄に優雅な古都のイメージが匂う。この銘柄の歴史は古く、天保11年度(1840)版銘鑑「天保改江戸積銘大寄大新版」にはすでに「志まや」という銘醸家が「都鶴」の銘柄酒を醸造していたことが記されている。以来、この酒は幾人かの酒造家に引き継がれ、今日の蔵元が受け継いだのが約半世紀前。「伏見の宮水」といわれる桃山から湧き出す清らかな地下水を仕込水に、南部杜氏が丹精込めて造り上げた色、味、香りの三拍子揃った風格は、まさに京の銘酒の代表格である。
 この酒は酒造好適米の山田錦(兵庫県産)を55%まで精米して造られるが、最初は米の甘味を感じながら、全体のイメージとしては純米酒独特の酸味がうまく溶け合い、バランスのよい風味となって、秘伝の味が息づいている。
 純米大吟醸「都鶴」のクラスから大吟醸「萬」「千寿鶴」「都しずく」。純米吟醸酒「寿」「京の嵯峨野」。特別純米「都浪漫」。辛口吟醸「龍馬」。特本原酒「蔵酒」など日本酒愛好家垂涎の酒である。


 都鶴酒造株式会社
 〒612-8394
 京都市伏見区下鳥羽西芹川町14
 電話 075-601-5301
 メール e.sake@dream.com


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