楽しい石仏との出会い


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◆石峰寺(せきほうじ)の五百羅漢◆
正徳三年(1713年)に建立された禅道場で裏山の五百羅漢は『長年の風雨を得て丸み苔寂び、その風化に伴う表情や姿態に一段と趣を深めている』とあるが、知る人は意外に少ない。それぞれ全く異なる表情が実に楽しいが、猛烈なヤブ蚊の襲来には受付で貸してくれた団扇などなんの足しにもならない。冬の季節にもう一度じっくりと見て回りたい。
 交通 京阪深草駅下車 東へ350m
〃稲荷駅下車 稲荷大社横、東丸神社より右へ歩いて300m。

◆大原・三千院のわらべ地蔵◆
 有名な三千院の中でその源ともいえる往生極楽院。その庭園になんとも微笑ましい小さなお地蔵さんを見つけた。どんないわれがあるのか聞いてみたが、ある信者さんが置いて行かれただけで大したいわれはないそうだが、三千院という背景がいい。杉木立と幻想的な苔。広々とした庭園を包む静寂。素晴らしいロケーションの中に戯れる『わらべ地蔵』に、見る人はなにを感じるのだろうか。

◆羅漢の寺・愛宕(おたぎ)念仏寺◆
嵯峨野めぐりの北のはずれ、参拝者が撞くのか山合いに響く鐘の音に驚く。寺の前の道標には『嵯峨野めぐりの始発点』と刻まれているが、逆から行けばそうなるのだと納得。
 境内から山の斜面にズラリと並ぶ千二百体の羅漢像には圧倒されるが、これは一般の信者がコツコツと彫刻したもので、それぞれ異なるユーモラスな表情は見飽きることがない。自分と同じ顔が必ずあるというが、それを見つけるのも楽しいひと時であろう。。
 交通 京都バス清滝行き 京都駅より72番
京阪三条駅より62番 愛宕寺前下車

◆高麗美術館前の石像◆
京都の街の北のはずれを何気なく通り過ぎようとした時、とある建物の玄関に建つ異国風の石像に出会った。表札には『高麗美術館』とある。中庭を覗くと、これもまた日本風とは少し違う石仏が並んでいた。その表情が面白くてシャッターを押したが、ここの二階には高麗・朝鮮時代の美術工芸品の粋が展示され、言語、思想、主義を超えて語りかけているという。
 京都市北区紫竹上岸町15番地 TEL075-491-1192
 交通 JR京都駅 市バス9号(約40分) 加茂川中学前下車
地下鉄北大路駅 市バス37号(約15分)

◆白沙村荘庭園の石仏群◆
銀閣寺の手前に日本画家・橋本関雪の記念館があり、関雪翁が生涯にわたって造り続けたという庭園の見事さは、平成15年、国の名勝に指定されている。その庭園の奥に点在する石仏は、周囲の清々しい青竹に彩られて、まさに日本画の空間である。
 その石仏群の中に、首をかしげた石仏に心惹かれた。なにを考え、なにを訴えかけているのだろうか。いつまでも印象に残る石仏であった。
 入館料 一般800円 学生500円

◆素敵なお地蔵さん◆
この表情と仕草にはもう、参った、参った!こんなお地蔵さんを見たのは初めてで、有頂天の嬉しさと驚きであった。これは清水の産寧坂にある湯豆腐総本家『奥丹』の門を入った左側の庭にあり、高さ50〜60pほどの小さな地蔵さんである。ご主人の石井康家さんは『イライラしている時や憂鬱な時、このお地蔵さんに対面するといっぺんに晴れ晴れする。今や我が家の宝です』と、お地蔵さんに負けないぐらいの笑顔で語った。

◆こんなところに大黒さんが◆
情緒豊かな祇園・白川のほとり、有名な巽橋や吉井勇の歌碑が並ぶ通りの縄手寄りに、小さな橋のたもとに建つ大黒さんを見つけた。彫刻の巧みさと個性ある表情にその料理旅館『白梅』を訪ね、いわれを聞いてみた。『以前から庭に何かが埋まっているのが気になり掘り起こしてみると、この大黒さんが出て来たんどす。皆さんにも見て頂いたらきっと大黒さんも喜ばれるやろうと玄関の橋のたもとにお祭りしたところ、十円玉や百円玉が毎朝上がっているんどすえ』しっとりと美しい女将さんと、福々しい大黒さんに逢えた嬉しい一日であった。
 場所 四条花見小路上がる三筋目を西へ

◆悲しみの観音像◆
嵐山・天龍寺から保津川に出る小道に湯豆腐『嵯峨野』があり、その横に究極の特攻兵器・人間魚雷『回天』の実物が祭られてあった。これは『嵯峨野』の先代社長の中川貢さん(故人)が、残酷な兵器から平和の尊さを考えてもらおうと展示していたものだが、この度、広島県の江田島に寄贈され、今はその霊を回向する魚雷観音像が記念碑とともに建っている。知る人ぞ知る凝縮された悲しみに、唯〃無言のままに手を合わせた。

◆嵐山・メインストリートのお地蔵さん◆
渡月橋北詰めから京福嵐山駅、そして天龍寺から竹の道に続く通りには土産物や飲食店、料理屋が軒並みに並ぶ嵐山の代表的な観光道路である。だが、天龍寺の入り口から少し北の道路脇に、可愛らしいお地蔵さんがあるのを見逃してしまう観光客も多い。
 このお地蔵さんは天龍寺の塔中の一つ、三秀寺の和尚が二人の孫の誕生を祝って祭ったもので、いかにも微笑ましい石像に出会えたのも、楽しい旅の喜びであろう。


◆石仏との語らい、蓮華寺◆
 春と秋のシーズンともなれば全国からの観光客で溢れる御室・仁和寺に比べ、すぐ東隣りの『石仏の寺』蓮華寺を知る人は余りにも少ない。 だがこの寺は五智不動尊を本尊とする真言宗御室派の寺で、応仁の乱の兵火で離散していた多くの如来像を昭和33年に収集。これらはいずれも歴史的芸術的価値の高い石仏群だとか。境内散策は自由で、ゆっくりと見て回れば、殺伐とした現代社会の中で心安まるひと時である。
 また境内には、先の大戦に学窓から海軍に身を投じた学徒たちの慰霊碑として、錨と軍艦旗掲揚ポールが祀られている。
 交通…市バス・御室仁和寺前下車。


◆大沢池の石仏群◆
 嵯峨・大覚寺の東にある大沢池…歴史とロマンに包まれた風景はしばしば時代劇にも登場するロケーションだが、そのほとりにひっそりと立ち並ぶ石仏群のたたずまいは、不思議なほどの魅力をたたえている。木々を背にして並ぶ大小二十体ほどの石仏のうち中央の七体が最も大きく、高さ1.2メートル前後、幅85センチ、厚さ60センチの座像。花崗岩の自然石を光背景にして荒々しく厚肉彫りされた群像は、訪れる私たちに何を語り掛けるのか。
 左から薬師、釈迦、胎蔵界大日、阿弥陀、阿弥陀。一つ飛ばして弥勒菩薩と並び、その後ろにある一本の椿が、大輪の花を落とした風情もまた格別。風化した古色の石仏と、点々と散り敷いた鮮やかな朱色の対比は、詩情を誘う一幅の日本画を見るよう。これらは誰が、いつ、作ったものかは一切不明だが、どうやら鎌倉時代初期の作というのが定評だ。
 四季折々に風情を変える山影を映して、池の水面をゆっくりと雲が流れて行く。七百余年の時空を超えてなお、モノ言わぬ石仏群にしばし時を忘れ、そっと手を合わせるひと時であった。
 右京区嵯峨大沢町
 交通…市バス『大覚寺』下車。



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